1919年に十月革命後のロシアで、ロシア共産党の主導によって設立されたコミンテルンは、1943年の解散に至るまで、長期にわたって世界政治、特に各国における社会主義運動に極めて大きな影響を与えた。とりわけ東アジアにおいてはその直接的な働きかけによって1920年代初頭に中国、日本、朝鮮、モンゴルなどで相次いで共産主義政党が成立し、第二次世界大戦までの間、各地域での社会運動、革命運動に決定的な作用を及ぼしたことは周知のことである。
ソ連という社会主義体制下においては利用することの出来なかったコミンテルンの運営実態や各国共産党とのやりとりを伝える原資料は、その崩壊によって公開され、1990年代以降は旧ソ連の機密文書発掘による「真相究明」書籍は日本でもいくつか登場したが、各国の共産党の出自にも関わる「コミンテルンと東アジア各国の社会運動はいかにして始まったのか」という問題は、未解決のままに半ば捨て置かれている。
本書は、未解決のこの課題を共同で解決していくことを目的とした研究グループの論文集である。
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