復刻版 『海の外』 全3回配本・全7巻・別巻1
ブラジル移民から満洲移民へ――。
大正期から昭和戦前期日本の海外移住の実態、現地社会と日本人とのかかわり、そして国内の様子を克明に記した稀有な雑誌『海の外』。
「移民先進県」長野のみならず、日本における「移民」の原点を伝える幻の資料をついに復刻!
『海の外』は1922年4月に創刊された、長野県の信濃海外協会の機関誌である。
1910年代から海外移民の推進のために、各府県で海外協会が設立されたが、その中でも信濃海外協会が設立された長野県は、最も多くの満洲移民を送出した県として有名であろう。長野県は1920年代から本格的に移民政策を展開しており、中でもブラジルへの移民に熱を注ぎ、他県の範となるほどのものであった。
そもそもこの時期に移民熱が全国的に高まっていた背景には、増え続ける人口を国内では養えないという困窮があったと考えられ、その「解決」のために活動した海外協会の分析は重要であろう。しかしながらこれまで各府県海外協会の活動はほとんど注目されてこなかった。その要因の一つには、各協会の機関誌の残存状況が悪く、総覧が困難であったことがあげられるのではないか。
そのようななかで『海の外』は、廃刊となる1943年5月までに253号が毎月刊行され、さらに1944年7月には後継誌『信濃開拓時報』(長野県開拓協会発行)が創刊、終戦間際の1945年5月まで11号が刊行されている。本復刻版には現存が確認できる207号(『海の外』196号、『信濃開拓時報』11号)を収録している。
その紙面には、移民奨励の様子のみならず、移住地の経営状況、現地からの通信が掲載され、また地域もブラジルや満洲に限定されず、排日運動下のアメリカや東南アジアといった、広範な地域に関する記事が掲載されている。
さらに別巻として森武麿『満洲移民とブラジル移民―信濃海外協会『海の外』を対象として―附『海の外』総目次・索引』を刊行。『海の外』、『信濃開拓時報』の特徴、関わった機関や人びと、そして今日的意義について明らかにしながら、なぜ長野県の移民送出は盛んでありつづけたのか、その経済的・社会的・政治的背景を解明、『海の外』活用の格好の手引きとなるだろう。
海外から日本への移民が増え両者の間の摩擦が増えるなかで、過去逆の立場にあった日本人が、どのような経験や思いを経て生き抜いていたのかを考えることは非常に重要なことであろう。そのための基礎資料として本資料集を供したい。
◎体裁=A4判・4面付・上製・総約2,250頁(原誌約9,000頁)
◎編集=森 武麿(一橋大学名誉教授)
◎刊行によせて=永田 翼
木村 快(NPO法人 現代座代表)
◎推薦=和田敦彦(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
名村優子(早稲田大学日本語教育研究センター非常勤インストラクター)
齊藤俊江(元飯田市歴史研究所調査研究員)
◎原本提供:長野県立歴史館、学校法人 日本力行会、下伊那教育会、飯田市歴史研究所、佐久穂町図書館、北海道大学
★『満洲移民とブラジル移民―信濃海外協会『海の外』を対象として―附『海の外』総目次・索引』
著=森 武麿
A5判・上製・総約400頁
定価4,950円(本体4,500円+税10%) ISBN978-4-8350-8844-0
2025年2月、第2回配本とともに同時刊行!
◎揃定価:235,950円(揃本体214,500円+税10%)
第1回 66,000円(本体60,000円+税10%)2024年11月刊行
ISBN978-4-8350-8834-1
第1巻 『海の外』第1~27号 大正11年4月~大正13年7月
第2巻 『海の外』第28~53号 大正13年8月~大正15年10月
第2回 70,950円(本体64,500円+税10%) 2025年2月刊行
ISBN978-4-8350-8837-2
第3巻 『海の外』第55~78号 昭和元年12月~昭和3年12月
第4巻 『海の外』第79~102号 昭和4年1月~昭和5年12月
別巻 森武麿『満洲移民とブラジル移民―信濃海外協会『海の外』を対象として―附『海の外』総目次・索引)
第3回 99,000円(本体90,000円+税10%)2025年6月刊行
ISBN978-4-8350-8840-2
第5巻 『海の外』第103~126号 昭和6年1月~昭和7年12月
第6巻 『海の外』第127~152号 昭和8年1月~昭和9年12月
第7巻 『海の外』第153~254号 昭和10年1月~昭和18年6月
『信濃開拓時報』第1~11号 昭和19年7月~昭和20年5月