『藤井忠俊著作集』全2巻
『国防婦人会』『兵たちの戦争』『在郷軍人会』を世に問い、現代史の会を主宰、松本清張らとともにアカデミズムによらず民衆史の立場から、新しい現代史研究を構築した藤井忠俊 (ふじい・ただとし 1931―2018)。
まぼろしの季刊誌として長らく渇望されてきた『季刊現代史』所収の論考のすべて、そして同誌最終号を復刻、収録(第1巻)。
さらに膨大な史料と格闘した国防婦人会、在郷軍人会関連の論考、また松本清張について深い洞察、公衆衛生に関してなど八面六臂の活躍をみせた藤井の手になる著述を集成。
藤井忠俊研究会による「藤井忠俊の現代史研究の軌跡」、ほか『季刊現代史』総目次、『健康管理』特集記事一覧、著作目録、年譜等を収録。全2巻を一挙刊行です!
推薦〇 駒込 武(京都大学大学院教授)
◎帝国史の側では民衆史のモチーフと方法論を咀嚼してきたのだろうか。
まったく不十分なのではないか。……藤井忠俊の言葉は、その不勉強に突き刺さる……
色川大吉、鹿野政直、安丸良夫、ひろた・まさきと連なる民衆史研究の動向と、一九九〇年代以降に勃興した帝国史研究の潮流はどのように綜合されうるのだろうか。民衆史の側では鹿野による伊波普猷研究があり、晩年のひろたは台湾における竹久夢二について論じた。それでは、帝国史の側では民衆史のモチーフと方法論を咀嚼してきたのだろうか。まったく不十分なのではないか。自戒を込めてそう感じる。「外地」にあると「内地」にあるとを問わず「日本人すべては、ファシストの下士官候補でもあったのだ」(「民衆動員について考えたこと」第一巻収録)という藤井忠俊の言葉は、その不勉強に突き刺さる。およそ半世紀前の指摘である。自分自身をその一部として含むところの「現代史」を学び直す手がかりとして、『藤井忠俊著作集』の刊行をよろこびたい。
編纂:藤井忠俊研究会
体裁:A5判/上製/全2巻/第1巻614頁・第2巻624頁
定価:各巻7,480円(本体6,800円+税10%)
第1巻『季刊現代史』の挑戦 ISBN978-4-8350-8328-5 C3036
第2巻 戦争と民衆史 ISBN978-4-8350-8329-2 C3036
刊行:2021年1月15日、全2巻同時刊行!