復刻版『紙之世界』 全3回配本・全10巻・別冊1
★明治黎明期から大正デモクラシー期まで、近代日本の製紙業界を全方位で描いた雑誌を復刻!!
「製紙消費額の多少は、以て国家文明の隆替を測る資料の尺度なり」―。
明治維新以降、官僚制・貨幣制度・教育・メディアなど近代化に欠かせない要素を下支えした製紙業の幻の業界誌を復刻!
第3回配本(完結)を1月19日に刊行いたしました!
一八九七(明治三〇)年に創業した大手洋紙店・博進社(現・文運堂)の社長・山本留次が一九〇八(明治四一)年に刊行させた雑誌。一九二三(大正一二)年八月まで刊行されたが、関東大震災のため終刊した。
山本留次は博文館創業者・大橋佐平の甥で第一号社員であり、大正・昭和期の代表的日記帳「博文館日記」の考案者と言われている。近現代日本の出版印刷業の先駆けと言える博文館の経営に参画し、かつ自身が博文館の子会社として創業した博進社は日本書籍、東京書籍、大阪書籍の三社が出版する小学校の国定教科書出版のための用紙を独占的に納入していた山本は、まさに製紙業・印刷業・出版業の中枢にいたといってよく、本誌刊行によって三業を振興させたいという強い願望を誌面から窺うことができる。
記事内容は製紙業を初め、新聞・出版・文房具業界の会社事業紹介・社長の人物譚、内外業界ニュース、業界の動向分析、洋紙の毎月卸値、商品広告を主としている。一九〇五(明治三八)年から日本統治が始まった南樺太での原料調達や新工場設置のニュースもあり、植民地経営史上も興味深い。雑誌自体が商品である用紙で作られたサンプルの意味合いもあり、博進社にとっては商品PRの場でもあった。
当時の業界誌「紙業雑誌」では創刊にあたり「美麗なる写真版数多を挿入し、舶来の上等印刷紙を用いあれば、体裁と云い、内容と云い、申分なき好雑誌なり。今や実業家の苦心、経営、成功若しくは失敗に関する記事を以て満載する雑誌は社会の最も歓迎する所となる。此風潮に乗じて紙及び其関係業を専門とする「紙の世界」の出づる事は誠に時好に投じたる美挙と云うべし。」と絶賛されている。
本誌発刊の辞で「製紙消費額の多少は、以て国家文明の隆替を測る最良の尺度なり」と宣言された通り、製紙業は単なる産業にとどまらず、近代国家の官僚制・貨幣制度・教育・メディア・流通の程度を図るバロメーターとなる。国力を測る指標として軍事力や経済力だけではなく、国ごとの文化・芸術・高等教育の普及度・魅力に着目する「ソフトパワー」が注目されるようになって久しい。本誌はそうしたいわば「ハードパワー」と「ソフトパワー」の狭間に位置する資料と言える。本誌の復刻により日本の近代化について新たな視点の研究が進むことを期待したい。
解説:
河内聡子(東北工業大学総合教育センター講師)
推薦:
樺山紘一(渋沢栄一記念財団理事長)
四宮俊之(弘前大学名誉教授)
原本提供:
神戸大学附属社会科学系図書館、北海道大学附属図書館
原本:
『紙之世界』第1号(明治41(1908)年11月)~第178号(大正12(1923)年8月)
※第177号は原本未発見のため未収録。
全3回配本・全10巻・別冊1
A4判・上製・総約3,800頁 揃定価297,000円(揃本体270,000円+税10%)
◎第1回配本(第1~3巻)
第1号(明治41(1908)年11月)~第52号(大正2(1913)年2月)
揃定価89,100円(揃本体81,000円+税10%) ISBN978-4-8350-8735-1
2023年4月刊行
◎第2回配本(第4~6巻)
第53号(大正2(1913)年3月)~第109号(大正6(1917)年11月)
揃定価89,100円(揃本体81,000円+税10%) ISBN978-4-8350-8739-9
2023年7月刊行
◎第3回配本(第7~10巻・別冊1)
第110号(大正6(1917)年12月)~第178号(大正12(1923)年8月)
揃定価118,800円(揃本体108,000円+税10%) ISBN978-4-8350-8743-6
2024年1月刊行
●別冊=解説(河内聡子)・総目次・索引
※別冊のみ分売可 定価1,100円(本体価格1,000円+税10%)
ISBN978-4-8350-8749-8