不二出版

書籍紹介

十五年戦争極秘資料集 補巻54 日本人捕虜関係資料 全1冊

★戦中・戦後の日本人捕虜の処遇に関する重要資料を収録。

編者のことば――

 

 戦後、生還した元捕虜たちの心身を「戦陣訓」の思想は呪縛し続けていた。アッツ島での「玉砕」を生き延び、捕虜となって帰還したある元兵士は、亡くなる直前のインタビューにおいて、生きて虜囚の恥をかいている、と絞り出すような声で語った(NHKスペシャル『玉砕』2010年放送)。社会保障の面でも「戦陣訓」の思想は生き続け、戦後も恩給面で元捕虜への差別的扱いが継続していた事実も指摘されている(吉田裕『現代歴史学と軍事史研究』校倉書房、2012年)。「日本人捕虜の戦後」というテーマからは、戦争と暴力が人間の心を蝕み続け、戦後も人々に「終わらぬ戦争」を強いるという事実が浮かび上がる。悲惨な戦争体験に依拠した戦後日本の平和主義が、記憶の忘却とともに地盤沈下しつつあるいま、本テーマを追究することは、戦争と暴力に対する想像力や痛覚を回復させてゆくうえで、重要な意味を持つと考えられる。

 こうした認識にたって、本資料集では戦後日本が捕虜をどのように処遇しようとしたのかを知る上で重要と考えられる資料(『日本人俘虜関係』国立公文書館所蔵)を採録し、日本人捕虜の「戦後」の一断面を示してゆきたい。これは、これまで充分に明らかにされてこなかった日本の「戦後処理」を、一次資料に基づきながら跡付けてゆく作業ともなる。

 なお、日中戦争期から日本の敗戦にかけての、日本軍の日本人捕虜処遇方針などについても、特に重要な資料を補足的に採録してゆくこととする。日本人捕虜に関する資料を体系的にまとめた資料集は管見の限りないので、本資料集の持つ意義や新規性は高いと判断できる。

宇田川 幸大(中央大学商学部准教授)

体裁――B5判・上製・総262頁

編・解説――内海愛子(早稲田大学平和学研究所招聘研究員)・宇田川幸大(中央大学商学部准教授)

価格――定価22,000円(本体価格20,000円+税10%)

ISBN978-4-8350-8755-9

  カタログダウンロード


タグ: , , , , , , , , , , ,